相続財産の効力に関する判例

相続放棄の効力(昭和42年1月20日第二小法廷判決)

<主文>
原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

被上告人らは上告人に対し、別紙物件目録記載の不動産のDの持分九分の一につき、名古屋法務局稲沢出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二七号をもってなされた仮差押登記の抹消登記手続をせよ。訴訟の総費用は、被上告人らの負担とする。

<理由>
上告代理人の上告理由第一、二点について。

民法九三九条一項(昭和三七年法律第四〇号による改正前のもの)「放棄は、相続開始の時にさかのぼってその効果を生ずる。」の規定は、相続放棄者に対する関係では、右改正後の現行規定「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかったものとみなす。」と同趣旨と解すべきであり、民法が承認、放棄をなすべき期間(同法九一五条)を定めたのは、相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして、相続人の利益を保護しようとしたものであり、同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法九三八条)、相続人は相続開始時に遡ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである。

ところで、別紙物件目録記載の不動産(以下本件不動産と略称する。)は、もと訴外Eの所有であったが、昭和三一年八月二八日同訴外人が死亡し、その相続人七名中上告人およびF両名を除く全員が同年一〇月二九日名古屋家庭裁判所一宮支部に相続放棄の申述をして、同年一一月二〇日受理され、同四〇年一一月五日その旨の登記がなされたが、Fは同日本件物件に対する相続による持分を放棄し、同月一〇日その旨の登記を経由したので、上告人Aの単独所有となったものであることは、原審の適法に確定した事実であり、この事案を前記説示に照して判断すれば、Dが他の相続人であるF、G、H、I、A、J等六名とともに本件不動産を共同相続したものとしてなされた代位による所有権保存登記(名古屋法務局稲沢出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二四号)は実体にあわない無効のものというべく、従って、本件不動産につきDが持分九分の一を有することを前提としてなした仮差押は、その内容どおりの効力を生ずる由なく、この仮差押登記(同出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二七号)は無効というべきである。

よって、この点に関する原判決の判断は当を得ず、この誤りが原判決主文に影響を及ぼすこと勿論であるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、上告人が本件不動産の所有権を単独で取得し、現在その旨の登記を経由していることは前記のとおりであるから、被上告人らは上告人に対し、本件不動産のDの持分九分の一につき、名古屋法務局稲沢出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二七号をもってなされた前記仮差押登記の抹消登記手続をなすべきである。

そこで、この登記手続を求める上告人の請求を正当として認容し、民訴法四〇八条一号、八九条、九六条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

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