特別受益とは?

Q.質問
兄は住宅の購入資金として父から1,000万円受け取っていましたが、それは今回の相続分には考慮されないのでしょうか?

行政書士・社会保険労務士 岩本浩昭

A.行政書士・社会保険労務士岩本の回答

原則として生前受け取った一定の財産は、特別受益として相続財産とみなし、相続財産にプラスされた上で分割されます。

特別受益とは?

特別受益とは、遺贈(遺言による贈与)や、結婚、養子縁組、住宅資金のために受け取った贈与分が当てはまります。

ただ、全ての贈与が対象になるわけではありません。(ただし、遺贈はすべて特別受益となります)

それぞれの範囲を確認していきたいと思います。
(養子縁組の贈与は結婚とほぼ同じなので省略)

■その1 結婚資金

これに該当するのは、持参金、新居、花嫁道具の贈与です。

額によっては結納金や新婚旅行の費用も該当することにもなりますが、通常結婚準備にかかる費用のことを指します。

ただ、結婚披露宴の費用は後に残らないものですし、親の都合も考慮されるものであることから該当するとはいいにくいでしょう。

■その2 住宅資金・生活の資本

一番わかりやすいのが住宅資金の贈与ですが、その他、仕事で使用する車を買ってもらった場合などが該当します。

ただ、外車の購入などは生活の資本とはいい難く、判断が難しいケースもあります。

生活水準が以前に比べ向上しており、過去の判例をもとに判断することも適当ではない場合もあるため、生活の実態をみて判断する必要があります。

特別受益の具体例

少しわかりにくいのですが、上記の例でいうと、兄が生前受け取った1,000万円はもともと父の財産であったわけですから、兄が相続財産を早めにもらっていたと考えられ、それを含めて相続分を計算することになります。

相続開始時の財産が3,000万円であったとします。

それに兄が生前取得していた1,000万円をプラスした4,000万円が相続財産であったとみなされ、4,000万円を各相続人で分割します。

相続人が母(配偶者)、兄、本人(弟=相談者)の3人であった場合、遺言で定められていなければ母が2,000万円、本人が1,000万円、そして兄は1,000万円をすでに住宅資金として受け取っていたので相続時には一銭も受け取ることができません。

仮に、兄が相続開始前に特別受益として1,500万円を受け取っていた場合でも、遺留分(最低限相続人が受け取るべき相続財産)を侵していなければ戻す必要はありません。

特別受益は払戻しの制度ではなく計算上の話で、相続財産の総額を把握するためのものなので返還する必要はないのです。

ただし、遺言書に特別受益として差し引かない旨を記載していればそれに従い、相続開始時に残っている財産で相続分のとおり分割します。

つまり、今回のケースで兄に援助した住宅購入資金1,000万円特別受益として差し引かないと父が遺言書に書き残していた場合、相続開始時の財産3,000万円を3人で分割することになります。

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